2015年05月16日

「To a you side 第九楽章 英雄ポロネーズ 第二十六話」予告編

東京出張、一週間。まずは足場固め、スーパーマーケットや食べる店等を探しております>挨拶












***


 異世界ミッドチルダの湾岸地区、"A73区画"と呼ばれる湾岸は開発が本格化したばかりのエリアである。聖地から程良い距離にある場所で郊外のように開放感がある区域だった。
海を見れば自然と海鳴を思い出してしまうが、単純な風景ではなく湾岸の空気にあの町と似た匂いを感じさせるからかもしれない。あの町は故郷ではないが、望郷の念に駆られてしまう。
案内してくれたセッテの話では半ば形骸化して軍用下されつつあった湾岸区を、ある医療法人が聖地の権力者を通じて認可を制定して医療施設を建築したらしい。聖地の発展による賜物であった。
大いなる発展と進化を遂げている聖地、聖王のゆりかごと聖女の予言を賜った聖王教会は、明らかに勢力を拡大している。この湾岸区も、法律上においても聖地の一部とも言えた。

実際ユーリ達を乗せたマイアの車を走らせて此処まで来たが、実質上の国境や検問が一切なかった。時空管理局に、聖地の権力者が通じている証拠である。恐ろしかった。

「良介様、ナハトちゃんは本当に大丈夫なのでしょうか? ずっと目を覚まさないのですが」
「夜天の人の話では、こいつらを構成する生体プログラムが一時停止しているらしい。汚染の進行を食い止めて、プログラム本体への悪影響を抑える処置だそうだ」

 時刻は夜、最小限の人数での行動。聖地の権力が拡大している現実を改めて知った俺達は、治療目的であっても隠密で行動に移った。この隠密行動は医療施設側からの条件でもある。
時空管理局捜査員のルーテシアや三役の方々には聖王教会からの紹介と断り、眠りについているユーリ達を搬送した。司祭や聖女の関係者であるドゥーエやセッテの紹介なので、一応嘘ではない。
同行者は護衛の妹さん、ミヤやアギト、このファリンのみ。弱体化した白旗を、敵戦力は間違いなく狙っている。本拠地であるアグスタも手薄には出来ず、最小限の戦力で行動するしかない。
強者達から見ればユーリ達こそ脅威であり、聖地の全病院は根こそぎ洗い出されているだろう。そういう意味では宿で寝かせておくより、この医療施設で治療を受けた方が安全だった。
聖地の権力者と通じている点は不安要素だが、あくまで権力を利用しているだけなので問題はないらしい。司祭をたらしこんだドゥーエの保証は、嫌な意味で安心させてくれた。あの女、怖すぎる。

無事怪我も完治した妹さんの能力は健在で、追手や襲撃者の"声"もなく無事到着した。自動人形オプションのファリン同行は俺の指名ではなく、本人の希望だった。

「ナハトちゃん、もう少し頑張って下さいね。わたしも一緒に戦いますから!」
「ナハトちゃん、ミヤもついていますよ。元気になったら、また遊びましょうね!」
「うう、お友達って本当に素敵ですね……私、感動しました!」

「――正直、あのノリがウザすぎる」
「仲間や家族の存在を肯定化しつつある俺も、あの勢いにはついていけてないから安心しろ」

 自分の娘の友達は親としてはありがたいのだが、一個人としてはマイア達の暑苦しさにウンザリする。俺やアギトがげんなりする中、妹さんやドゥーエを連れたセッテは冷静に車から降りた。
近隣に大型施設こそ無いものの、海や運河に面した湾岸区は聖地の魅力を生み出しているとも言える。自然豊かなあの聖地に海の資源が加われば、より活気的な自治領となるだろう。
聖地の開発が本格化すれば、いよいよ支配権争いが現実となる。この湾岸区は今のところ空白地帯だが、俺達白旗が敗れれば間違いなく支配圏となるだろう。連中の好きにさせてはならない。

聖地の医療法で定められた医療提供施設――観光バスの到着を待っていたかのように、玄関口に一人の女性が立っていた。


「お待ちしておりました、陛下。当医療施設の医療秘書を務めております、"ウーノ"と申します」
「――あんた、あのテレビの」
「ご挨拶が遅れまして、大変失礼いたしました。妹達がいつもお世話になっております、陛下」

 異国の地ドイツのホテルで突如部屋のテレビより映しだされた、異端の交流。博士風の男性と一緒に居た女性が、慎ましく頭を下げる。容貌こそ似ていないが、姉と言われれば納得出来る。
桃子やリンディとは異質の抱擁力、母ではなく姉であれば頷ける空気。どちらかと言えば同じ提督のレティに近しい、理知的な美人。苦手ではあるが、憧れてもしまう年上の魅力があった。
テレビで見た時感じた、露骨な敵意はない。単純な度外視ではなく、観察に近しい分析の視線で俺を見上げている。一定の敬意を持った、大人の対応だった。こういう女性は、非情に手強い。

警戒とまでは行かなくも距離を取る俺の前に、セッテがトコトコと歩み出してウーノにビシッと指を突きつける。

「どうしたのかしら、セッテ。敬礼が足りない――敬礼?」
「ちょっと、セッテ。私の脊髄を軽くエグっておいて、どうして同じ姉のウーノには口頭注意なの!?」
「……」
「敬意の違いって、酷い!? 陛下を一番愛しているのは、私なのに!」

「ど、どうしたの、ドゥーエ、それにセッテまで!? もしかして陛下、また貴方なのですか!」
「何でか知らないけど、一瞬で評価が下がった!?」

 今まで数多くの女に嫌われてきた俺だが、初対面で敬意から警戒まで落ちるのは珍しい。大人だったウーノさんのおかんむりに、俺としては日本人ばりに平謝りするしかない。
セッテの変貌には多少の心当たりこそあるが、ドゥーエの変態ぶりには毎度のことだろう。姉妹の教育まで俺の責任にされても困る。いや、本当に。
とはいえさすがは若くして医療秘書にまで成り上がった女性、気を取り直して患者の応対に当たってくれた。観光バスより、ユーリ達を搬送用のベットに寝かせていく。

運転手のマイアも降りるが、隙を逃さずに注意されてしまった。

「お約束頂いている通り、当医療施設は関係者以外の立ち入りを禁じております。事前の許可がない人間を、立ち入らせることは出来ません」
「この子は俺達の関係者だ、秘密も守ってくれる」
「陛下の関係者であろうと、当医療施設では部外者に該当する人物です。許可は出来ません」
「だから、こいつは――いや、分かった。じゃあせめて、待合室かどこかに案内してほしい。聖地の状況を考えれば、一人で返す訳にはいかない」
「畏まりました。お客様、こちらへどうぞ」
「悪いな、マイア。いつもこっちの都合で振り回してしまって」
「いえいえ、全然かまいませんよ。いつもお世話になっているのは、私ですから!」

 ウーノの額面上の対応に一瞬頭に血が上ってしまったが、アリサや三役の叱咤を思い出して踏みとどまる。リーダー格の人間が集団を連れている時、個人の感情で動いてはならない。
守秘義務や情報漏洩を重んずる上で、ウーノの対応はむしろ俺達の都合からすればありがたいのだ。霊障に遭ったユーリ達の存在を表沙汰には出来ない、彼女の対応は適切だった。
実際俺が態度を軟化させた途端、ウーノは即座に対応を切り替えてくれた。相変わらず客観的に考えられない俺の浅はかさには、ゲンナリさせられる。もうちょっと、視野を広げなければ。

待合室で待つマイアにはミヤがついてくれることになり、アギト達を連れた俺は医療施設内へと案内される。どうやらこの施設は、介護療養型の医療施設であるらしい。

介護医療と聞くと特別養護老人ホーム等を思い出させるが、ようするに医療ケアや機能訓練が充実している施設という事だ。主に医療法人が運営する特有の医療施設で、秘匿性も非常に高い。
居室や浴室・トイレ等の共同設備、機能訓練室や診療室、食堂と共同リビングを兼用する共同生活室等も構成されており、表沙汰に出来ない患者の為に病院と併設されているのだ。
なるほど、ここならユーリ達を安全かつ適切に治療を行えるだろう。ドゥーエの紹介で不安極まりなかったが、思っていた以上に素晴らしい医療施設に感嘆させられた。


***







ユーリ達やのろうさ達を同じ女性のウーノが診断する中、俺は医療施設の長と対面する――予想通りの、男性と。







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posted by リョウ at 14:24| 大阪 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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