2014年08月14日

新刊「To a you side 5th 悪しき世よ、われは汝に頼まじB」サンプル公開

当日、ぜひ手にとってみて下さい(´・ω・`)ノ>挨拶












***


 生きてさえいれば幸せ、とは誰が言った戯言だろうか。
 悪夢のように甘く優しい死から目覚めたら、痛くて苦しい生に苛まされる。冷たい雨が、体を重く濡らす。
 省みるまでもなく、顧みる必要もない。
 
 俺は救われて、あいつは救われなかった。

「そ、そんな――確かに、死んだはず……」
 
 そして俺を殺した女は目の前で、図々しく生きている。
 
 驚愕を露わにする女の双眸に、血染めの死人が移る。
 眼球が割れ、鼻が砕け、口が避けて、耳が破れていた。
 髪は血と雨に濡れて、肌が裂かれ、肉が潰れている。
 腕が垂れ下がり、足が折れている。指は、割れている。
 ――転がる竹刀だけは、拾い上げられた。

「――その姿。あのおチビちゃんは、『ユニゾンデバイス』だったのかい。なるほど、それで立てているのか」

 無事なのは剣を握る手の平、あいつが優しく握った手。
 残されたのは心、異物を抱えたがらんどうの中身。
 
 感情無き男の代わりに、感情豊かな少女が泣いている。

 "ごめんなさい、リョウスケ。
 だ、だずげられまぜんでじだ、ごめんなざい……"

 俺は、生きている。ならば、誰が助からなかったのか。
 考えるのは、やめた。考える必要も、なかった。
 夢とは、覚えていないから夢。
 ならば覚えているあの光景は、現実だったのだろう。
 夢なら良かったのに、とは思わない。
 
 死ねば、夢なんて見れないのだから。

 物語が終われば、続きなんてありはしないのだ。


***


 生きるということは、記憶を積み重ねるということだ。
 人間は忘れる生き物だが、生きることで覚えていく。
 生と死の境を彷徨うというのは、記憶の混乱を生む。

 惨劇の夜。朝に至るまでの記憶が、途切れがちだった。
 
 後から思い出そうとしても、明確には思い出せない。
 肉体は死に瀕しており、心は原型を留めていなかった。
 高町なのはが、泣いて縋っていた姿が見えた気がする。
 救急車の赤ランプが、不気味に光っていた感じがする。
 頭の中で、ユーノの声が木霊していた覚えがある。
 フィリスの悲痛な出迎えに、悲しみがよぎったと思う。
 
 その全てが混ざり合い――真っ暗に、なった。

 多分、死にかけていたのだろう。
 恐らく、生き足掻いていたのだろう。
 きっと――この夜が、峠だったのだろう。
 一度は死んで、アリサに救われた。あの子は、居ない。
 死ぬ前は、本当に独りだった。守護霊は、いない。
 寂しいという気持ちは、なかった。
 悲しいという気分でも、なかった。
 救われるべき人間ではないのは、分かっている。
 例え一人でも、自分勝手に生きようともがいているだけだ。この生命は、俺のものじゃないのだから。
 記憶は、途切れている。脳は、何も残していない。
 もしもあったとすれば、温かい手の感触だけ。

「――辛いでしょう、喋らなくていいわ」

 自分が産まれて最初に出会う、人。誰だっただろうか。
 自分が死ぬ時まで、律儀に会いに来てくれたのか。
 多分この人は、本当の――じゃないだろうけど。


「今日俺を好きになってくれた子が、死んだんだ」


***


「恭也」

「どうした」


「俺は、人を斬った」


「……」

「斬り殺そうと思って、斬った。躊躇いは分かった。
 人殺しが罪とか、家族が心配するとか、未練や躊躇さえも斬り捨てて、俺は敵を斬ったんだ」

 高町恭也は黙って、話を聞いている。糾弾の声はない。
 断罪もせず、贖罪を求めず、事実を受け入れる。

 きっと、分かっているのだろう。


***


 冷え切った刃の切っ先を、女に向けた。

「初めてだよ」
「あん……?」

 自分で口にした後で、自分の言葉の意味を理解する。
 初めてだったのか――純粋に、驚いた。
 何度もあると思っていた。当たり前だと、考えていた。
 剣を手にした以上、当然だと思い込んでいたのだ。
 なるほど、つくづく俺という剣士は救えない。
 こんな事を、今頃になって思うのか。
 敵に殺された後でようやく、気が付いたのか。


 ああ、そうか――こういう、感覚なのか。


***








「初めて――他人を、斬り殺したいと思った」







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夏コミ新刊『To a you side 5th 悪しき世よ、われは汝に頼まじB』、出展予定
posted by リョウ at 22:09| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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