2012年06月24日

To a you side 第7楽章 暁は光と闇とを分かつ 第五十七話 予告編

本日の行動:鍼治療→岩盤浴→温泉→うなぎの蒲焼)ぇー>挨拶



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 膠着した戦場というのは時に、激戦を繰り広げている間よりも消耗させられる。部屋に戻っても身体が痺れ、緊張が解けてくれない。
世界会議も三日目を迎えているが、閉幕する気配もない。戦況は常に揺れ動き、思いもかけぬ展開を見せつける。
各陣営が惜しみなく戦力を投入し、策を弄して、必殺の切り札を出している。刃を突き付けられては、満足に眠れるはずもなく。

深夜に及んだ第二回の会議を終えて、次の日の朝。窓の外の天候は穏やかなれど、古城は不穏な気配に満たされている。

「眠気はあるのに、全然眠れん……朝飯でも作るか」

 海外へ来てからというもの常に頭を働かせる癖がついてしまい、布団の中で目を閉じていても脳が回転しまくっている感じがする。
神経がささくれているのが、自分でも分かる。何だか最近、笑っていない。気を張ってばかりで、他人とも腹の探り合いばかり。

敵ではあるが――欧州の覇者達、彼らを尊敬する。彼らは悪鬼羅刹蔓延る世界で、毎日のようにこんな戦いを続けてのし上がったのだ。

たかが三日目で心身共に疲弊する俺とは、大違い。勝たなければならない戦いだが、独りになると膝をついてしまいそうになる。
海鳴に居た頃が懐かしい。あの町ではいつも、何の意味もないくだらない会話をしていた。面倒極まりなかったのに、今は焦がれてしまう。

……やはり疲れている、朝飯を食って元気を出そう。頼めば作ってくれるが、手軽に食える庶民的な料理を食いたくなった。

栄養なんぞ皆無だが、カップ麺とかたまに啜りたくなる。城の外にコンビニでもあればいいのだが、此処はドイツだ。
料理を作る材料を電話でさくらに頼――と、その前に。俺は自室のドアを開ける。

「おはよう、妹さん。特に問題はない?」
「おはようございます、剣士さん。異常はありません」
「分かった。俺はもう目が覚めたから、しばらく休んでくれていいよ。何かあれば知らせるから」

 妹さんが俺の護衛に就いてまた日は浅いが、この子が疲れた顔をするのも見たことがない。黙々と、真面目に職務をこなしている。
夜通し見張ってくれていたのに、休憩もせずに部屋の前に立っている。睡眠とか必要ないのだろうか、この子は?
休憩を促すと妹さんは俺を見つめ返して、一礼する。職務意識は高くとも、任務にこだわり俺を困らせたりはしない。良い子だ。

妹さんが隣の部屋に引き上げるのを見届けた上で、さくらに室内電話をかける。

『貴方は立場としては、招待客なのよ。何も自分で作らなくてもいいのに』
「気分転換だよ。悩んでばかりで、いい加減頭痛がしてきた」
『貴方は本当に、よくやってくれているわ。難しい決断を迫らせて悩むのは分かるけど、焦って先走っては駄目よ。
私でよければ、いつでも貴方の力になるから』
「ありがとう。まあ朝飯でも食って、ゆっくり考えるよ。こればかりは、俺が考えて決めないと」
『彼女は、危険よ。貴方が断る可能性も考慮して動いている。連絡は密に取り合いましょう』
「ああ、よろしく頼む」

 朝飯の材料の事も頼んでおいて、電話を切る。昨日の会議については、さくらも色々気に掛けてくれている。
一歩引いたスタンス、アメリカとの交渉については全面的に支援するが最終的な決断は俺に委ねる。善悪さえも、差し置いて。

単なる雇用契約ではない。引き受けても、断っても、多大なリスクが生じる。だからこそ後悔しないように、俺に選ばせる。

明らかに怪しく、それでいて危険極まりない研究。法や正義を持ちだして反対しないのは、事態を重く受け止めているがゆえ。
そしてどういう事態に陥っても、力を貸してくれる。恐怖や不安も、彼女がいれば和らぐ。あの人は、淑女だった。

室内電話が、鳴る――おっ、もう厨房に頼んでくれたのか。さすが、仕事は早い。




『失礼致します。宮本良介様、でいらっしゃいますか?』




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最新型……一体、どんな自動人形なんだ……



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posted by リョウ at 00:25| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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